使役犬・ワーキングドッグ
視覚障害のある人が町中を歩く時にサポートする犬、それが盲導犬です。現在、その名前自体は広く認知された感がありますが、実際の仕事の内容や向く犬、訓練、育成費用、実働数、町中で出会った時の注意点とは?
犬ガイド
今回は、盲導犬の基本情報についてお伝えします。お話は、国内で唯一、盲導犬・介助犬・聴導犬の3種すべてを扱う公益財団法人日本補助犬協会の安杖直人さん(広報担当、社会福祉士)にお聞きしました。
盲導犬とは、身体に障害がある人をサポートする補助犬の1種
補助犬
身体に障害がある人をサポートする補助犬は、盲導犬・介助犬・聴導犬の3種を指す:©公益財団法人日本補助犬協会
身体に障害のある人をサポートする犬のことを「補助犬」と言い、それには「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」の3種類があります。
このうち、「盲導犬」は、視覚に障害のある人が町中を歩く時にサポートする犬のことを言います。独特の形をしたハーネス(胴輪)を付け、その持ち手部をユーザーさんが握ることにより、障害物を避けるなどして、ユーザーさんが安全に歩けるようにサポートします。
ハーネスは道路交通法により、色(白または黄色)と形状が定められており、ユーザーさんが犬の微妙な動きから、いろいろな情報を把握しやすいような作りになっています。
盲導犬・介助犬・聴導犬
国内での補助犬の実働数は、盲導犬941頭、介助犬70頭、聴導犬71頭/身体障害者補助犬実働頭数(都道府県別)、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部(2018.7.1現在)より:(c)公益財団法人日本補助犬協会
盲導犬に向く犬は?
盲導犬・介助犬・聴導犬になる犬には、共通して以下のような性格が求められます。
人に対する愛着があり、人と一緒に何かを楽しむことが好きで、人との生活に積極的に関わろうとする性格。
順応性があり、環境の変化に左右されず、いつも自分らしくいられる。
集中力や、率先力がある。
さらに、それぞれ役割が違うため、盲導犬には次のような性格要素も求められます。
主な仕事場は外であるため、毎回状況が違い、誘惑物も多い中で、気をとられ過ぎずに淡々と仕事ができる性格。
盲導犬の原型と思われる姿ははるか昔にその面影を見ることができるそうですが、現代で言う盲導犬の発祥は1780年代のフランスにあり、その後、オーストリアでも試みられたということです。しかし、本格的にスタートしたのは第一次世界大戦中のこと。毒ガスによって視力に障害が生じた兵士のために犬の訓練が本格化したといいます。
当初はジャーマン・シェパードが多かったようで、アメリカ初の盲導犬バディーも、日本国産第1号の盲導犬チャンピィもジャーマン・シェパードでした。ちなみに、岐阜県において、暴走する車からユーザーさんを守り、そのケガがもとで自らの左前脚を失った盲導犬サーブもジャーマン・シェパードで、後に道路整備のあり方や、盲導犬にも自賠責保険が適用されるべきといった法律改正にも大きな影響を与えたことは多くの人が知るところです。
盲導犬サーブのテレホンカード
盲導犬サーブがモデルとなっている交通安全のメッセージが綴られたテレホンカード(ガイド所有):©Pmoon
盲導犬は仕事の内容からも一定以上の大きさが必要ですが、現在は、順応力や人への愛着度が高く、人との仕事を喜び、見た目も優しく、威圧感がないなどの理由からラブラドール・レトリーバーがもっとも多くなっており、次いでゴールデン・レトリーバー、ラブラドールとゴールデンとのミックス(F1)、その他ジャーマン・シェパードなどが活躍しています。